8:30分 僕らのミッションは始まった。
作戦名「前田です。下から読んでもマエダです。」
このミッションの目的は、制服でわが母校になにくわぬ顔で侵入し、先生とさわやかなあいさつを交わしたのち後輩と戯れる、というものである。
しかし、さっそく僕らの前に敵が現れた。
「羞恥」。これは僕らの行く手を阻んだ。
「あれ?これ、普通にうちらきもくね?」
当然である。この作戦自体、テンションが異様に高揚していた時に立案されたものであるから、キモいのは当然である。
これはアレだ、夜中に気合入れてラブレターを書いたが、翌朝冷静に読んでみると顔から火が出るほど恥ずかしい時と同じである。
以下、そのラブレターを記してみることにする。
愛する君へ
僕の日課は枕を君に見立てて毎晩囁くこと。
愛してるよ
この言葉を何回囁いたことかわからない。
そろそろ伝わったかな?
伝わってないなら、今日もまた囁くよ。
愛してる。
とまぁ、こんな具合のラブレターを書いた時のアレだ。
ま、とりあえず冷静になってみると果てしなく気持ちの悪い計画だったのだ。
が、ここで止めるわけにもいかない。ここで止めたら男がすたるぜ。
そう、それが イッツ マイ ライフ☆
正門に向かった。そこには第2の敵、「恐れ」が待ち構えていた。
先生に普通に怒られることを恐れた僕らは裏口に回った。
しかし、そんなに世間は甘くない。僕らをみかけた先生もまた裏口に回った。
そして、吠えた。
「おい!こっち戻ってきなさい!おまえらの考えてることはわかってんだよ!」
いや、僕達の考えてることなどわかるはずもない。そう、なぜなら僕らは卒業生。
僕は逃げた。すると、また吠えた。
「にげるんじゃない!こら!」
しぶしぶ戻った。そして、これは作戦「前田です。下から読んでもマエダです」ということを伝え、和解。
一度入ってしまえば在校生も同然、誰も僕らに目を向けない。いや、後輩の興奮ぶりといったらもうたまらなかった。
そんなこんなで高校の文化祭を満喫したぼくらはお世話になった先生方にあいさつをし、正門を出たのだった。
正門をでてみても、あの日と同じ風景が広がっていた。なのに、ぜんぜん違う景色に見えるのはなぜだろう。
それは、僕らがちょっぴり大人になった証なのかもしれない。
[ミスターキャンパス] 17:02 post by Shigeki Maeda | この記事のURL